ウルフさんに会いたい    白川ユウコ

  • 投稿日:2020年05月09日
  • カテゴリー:短歌

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ウルフさんに会いたい    白川 ユウコ

ポケットの小石をひとつひとつ捨て車ながれる道こえてゆく
ヴァージニア・ウルフのようにうつくしく解離なすべしおみなごたれば
マンションにわたしひとりの部屋があり夫婦ふたりの暮らす浜松
西日さすコックピットのような部屋片手でさがす『波』『燈台へ』
七階に小さきわれの生あるかマンションひとつ遠景に見る
「いま死ねば、この上なく幸福だろう」二十二歳のペンの線あり
耳元に「もう死んだっていいよう」と中也までもがささやいてきた
おんなのこのからだはひどくやさしくてしばし弱りし頬をうずめる
純白のトルコ桔梗の花束は生きているからすこしつめたい
われ去りしのち苧環の花となり春となりなば足元に咲く
出会うことなくともはるか奔りゆく脱走兵よ逃げ切ってくれ
正確な平行線はありませんこの先いつか斜交いの辻
屋上のフェンスはわれの土踏まず忘れただろう炎暑風雨に
気がふれただけで人生終わるほど世の中甘くないわ奥様
Perfect hostessとしてわたくしはバラとヒペリカムを手配した

白川ユウコ(しらかわ・ゆうこ)
1976年生まれ、1999年『制服少女三十景』(フーコー/星雲社)、
2007年コスモス入会、2015年『乙女ノ本懐』(六花書林)、
COCOONの会発足に参加、会員。

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