新しい世界   髙澤志帆

  • 投稿日:2020年09月05日
  • カテゴリー:短歌

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新しい世界   髙澤志帆

透明なビニールカーテンに阻まれる声はりあげる会計窓口
会計で頷けず上に訊きにいく年金支給日に支払ふと言はれ
ジグザグに椅子を配置し向き合はぬ職員食堂の開け放つ窓
病院に勤める娘が心配と母の電話をふすま越しに聞く
東京で感染すれば村八分だと母が止めしフェス開催中止
火渡りの行者の足裏あうらなど思ふ乳癌検査の触診の間を
くばられし矢車草の種袋いのちの電話の番号を付す
むかし土器を拾ひし頃に流したる血より黒きが沈む採血管 スピッツ
他界からかへれるやうにめざめたり無罪有罪わすれし罪よ
農道の側溝にゐる野良猫に来るなと命じ減速をせり

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