根切虫               北川 透 « 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト

根切虫               北川 透

【6月21日掲載】詩歌トライアスロン「根切虫」画像用-1
 
 
【6月21日掲載】詩歌トライアスロン「根切虫」画像用-2
 

根切虫               北川 透

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猫捨ててネオンも消えて根も切って
夜盗虫 枯れ葉に堕ちてもがいてる
明けぬ闇癒されぬ病みも やみ惚け
こねこねと根っこを食べる 黄金虫
明日死なん 軟骨折れて詩も折れる
 
 **
花と言わず ことばと言わず 苗木と言わず 梅雨時のきょうはむ
しあつい日曜日 
大根と言わず 父母と言わず 故郷と言わず 歴史と言わず 毛の
抜けた犬がひょろひょろと尿を垂れ流して通り過ぎ
現実と言わず 神殿と言わず ガジュマルと言わず 太い根が巨木
の枝からも 空中散布された開戦を告げるビラからも垂れ下がって
いるよ
地中に隠れていようが 地表にむき出しになっていようが 少女の
血の滲んだ真綿に触れる黒いカラスに殺意むらむら 
天の川で泳いでいようが 形而上的な刑罰に耐えていようが ステ
ンドグラスの下で白昼行われている淫猥な犯罪に 
微笑んでいようが 恨んでいようが 怒っていようが すべて根を
もつものは食べられる ほら 見てご覧よ 
青白い根切虫が ところかまわず うようよ這い回ったり 漂った
り 笑ったり 突っついたり 潜ったり 跳んだりしている 
 
 ***
ひとにぎり きおくのよごれ とかすせんざい
ひとのはだ むしというはり つきささってる
ひとみずは あいいれないね けむりもこもこ
ひとみさん うみのそこから てをさしのべる
ひとしれず ずたずたにさけ こえをうしない
 
 ****
愛するという石こばみ へつらう神とすれちがう
あかあかと死ぬ夜明け前 燃えやすい紐になる
もう満開の王も散る 稲妻も散る列島に
かわいい子象転がして 喝采を得る芸なんて 
鬼を出すよりかざぐるま モーツアルトも腐乱する
衰える夏の音楽 前も後ろも死びとばかり
 
*****
根のないものはない ヒマラヤスギ チョウセンマツ ハナワラビ
カヤツリグサ サクラソウなどの草木はもとより スマトラトラ 
ヒトクイザメ イソチドリ トノサマガエル クサカゲロウなどの
鳥獣や昆虫までの動物も根を生やす 火成岩や水成岩 建築物や貨
物船 エンピツやボールペン パソコンや炊飯器などの物体や生活
用具 ダイヤモンド・ダストなどの気象上の現象 アンドロメダや
ケンタウルスなどの星座 世界都市ニュウヨーク五番街から椎葉村
や五木村の過疎の部落までも 根を生やしている ヒトもヒトの営
む労働や生活 喜びや悲しみも 限りなく肥大するだけでなく 引
き千切られ断片化する観念も それらうたってるもの 語ってるも
のすべては根を生やしている 根は水の潤いを求め 生きる肥やし
を求め 自立するエネルギーを求め あらゆる領地を侵犯し 境界
を超え 障害を潜り抜け いたるところにびっしりと纏わり 根を
張ろうとする 根から根は細い毛のように煙のように生え その根
は成長し 怖れ怯み震えながらも 古い根から新しい根が生えて 
根は無数に枝分かれし 枝分かれした根はさらにか細い枝を生み 
四方八方に伸び続ける 根が躍動し 屈折し 増殖し 吸収し 拡
散しているうちだけ 根を生やしてうたっているもの 語っている
ものもまた生成し 存在のいのちは保たれる 根が根腐れを起した
り 根絶やしにされたり 根切虫の繁殖によって噛み切られたり 
根が根の働きを失う時 存在のうたは廃れ 語るものは立ち枯れる 
 
 ******
悪臭に顔をしかめる ドクダミの花
薬用酒 ドクダミに酔い痴れる朝遠し
白い花 夢のなかまで解毒する
ドクダミを飲んでくるって乳房抱く
水無月や ドクダミのごとく川下る

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