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椅子   亜久津歩

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【連載第1回】詩歌トライアスロン

椅子   亜久津歩

 ――背後が云った(あるいは鳴った
  「発話せよ」
  ノンフィクションの言葉のように重奏的なゆめからさめて
 。
遺体のやうな夜を横たへ
あをみたる雪はゆつくりゆつくりふる
わたしが少女だつた頃あなたは怒りだつた
明くる日の泥はなめらかで
今にも逝けさうにおもはれた
  、
階段のうらに階段春の雨
それともこなごなの虹
あなたが夕映だった頃わたしは濡れた欄干で
靴をそろえる夢ばかり見た
かなしみばかりきらめいていた
    、
その羽はよろこびの鱗のように剝がれ落ち
ふるえる翅をわらわせた
誘蛾灯いつかは光さすほうへ
       、
遺すべきことなく透けるガラスペン
清澄な濁りは白く にくしみは
憶えているための椅子、
立ちあがることもできぬまま、
怒りのように歩くのは、、
かなしみのように産まれ、、
よろこびのように果てるため、、

仰ぎみるまなうらを貫くふかき夢

あをみたるまぶたを月は撫でにけり
 。 
  おはよう モルヒネの花が満開よ
  木陰の私へ腰掛ける亜久津歩のオブジェ
  苔生す指は日時計よりも幽かに軋り
  温む軌跡を奏で始める――

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