「花瓶には星を蒐めるゆっくりとまぶたを下ろし息をつづけて」
亜久津歩
水槽の音をみる寝室はオリオンと精肉の冷暗所
花瓶には一輪の薬指 ささやかな淵をさし
失った日の木漏れ陽をまた浴びるためにと溺れるように
星を蒐める銀幕だけが抱きしめてきた遠浅の闇
ねえ、満ちひきは寂しいですか 満ちかけよりも痛いでしょうか
ゆっくりと ゆっくりと明けていく
こういう夜をもうながいこと忘れていたよ
まぶたを下ろし眺める街に滲む灯りは
息を続ける いきをつづける
あなたには冬の菫でいてほしい