ちいさき冬に
あかぐろき宵のさざんか粛々と謝る仕事をこなして暮らす
かたばみのはじける音は風景に10デシベルを上乗せしたり
明治ヤンヤンツケボーを夜半のおやつとし指もて抉るチョコの残りを
たまに痒くなるためだけの乳首などふたつ灯せりちいさき冬に
精神の散るさびしさは謝罪して謝罪して白き萩ふりこぼす
煙草より炎あがらぬ理由などしばらく思い、知るよしもなし
石垣に実り合いたるかたばみのはじける音はかたばみが聴く
てのひらの奥に血管しげらせて会いにゆくその街灯のした
水を煮て今しばらくをそのままに煮えくりかえるものを俯瞰す
春になれば春の謝罪をくりかえし降るはなびらを帰路は見にゆく
作者紹介
- 内山晶太(うちやま しょうた)
一九七七年千葉県生まれ。
「短歌人」「pool」同人。
第十三回短歌現代新人賞。
歌集に「窓、その他」(六花書林)。