私の郷土史 鈴木一平
町はずれの巨人たちが
もたれあうのを避けて
骨を抜いている
みんな、昔よりも
背が高くなっていく巨人たち
の右目に詰めた
ゼラチンの顔をゆすって
自分の声を出している
股を押さえて垂れ流す汁が
展望台から見えるもの
焼けたアロエの細胞でできた
子どもの骨が
公園で水を飲んでいる
木々の間から
首が咲いている
あつめた骨でつくった
市民センターの三階で、骨を
抜いている腕を
引きちぎられた
駅前にあるロータリーでは
折り重なったマネキンらしき
小さい頃に、親といっしょに
はね飛ばされた勢いのまま
手足を加工し、余る部分を
この私は
百年かけて
くり返し思い出している
やがて、町はずれで
ここから紐のようにも見える
首の
かたちが伸びている
明日、百年遅れた地図を開いて
住んでいた家がなくなった
当時は川も流れていて
アユやオイカワといった魚が
なりあわさった、すりつぶされた、
コンクリートを流し込まれた
子どもの墓が
公園で骨を飲んでいる
餌を探してざわめく団地
巨人の肉を束ねる坂
思い出したように
間もなく
夕暮れ時には顔の匂いがする
いくつもの先に見られている
だけかもしれない