石のエロス 来住野恵子
風の匂いが変わった
雷鳴のまえ 察して吠え出す犬のように
なにがしか遠く身震いする
沈黙投下
粒立つ全身
不可解という地獄のスィーツに辟易して
ぶつかるのか落ちるのか
みえない必然の引き金にふれ
いずれ爆発する
瞬間の高熱で砂から溶け出すシリコンのように
隕石の暗号を解きながら
まっさかさまの夜の淵からきらきらきらきら
無尽の沙漠の緑がかったガラスが
またたいて凍る
恐怖だって
いつか身をもってこわれる、だけど
そうしていたいんだね
もうむりやりわかろうとはしない
わからなさもまた闇を走る呼び声のように
こころを繋ぐと
いまは信じられるから
頭上にぽっかり雲が浮かぶ
どこまでも行ってみる
徒に苦しむより頷こう
道端にこぼれ咲く星のかけら
草影の石の夢
変化する!それだけが唯一不変だ、と
足もとから迸る流星に洗われ
みずみずしい銀河の手綱を掴む
傷だらけの古い地層が駿馬の目のようにかがやいて
潔く笑顔でいる