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3.png詩歌トライアスロン第7回三詩型鼎立受賞連載
逆ディスコ 斎藤秀雄
ピープル、踊れ、逆に、
ひらたい水平線は生きもののように朝日が沈む、
(白いおおきな蛇を水の
穴につっこんでたくさんなまずを得るしくみ)、
島のどこにいても錯覚のように潮風を錯覚する、
人はしあわせな木、木々、木々
のあいだを流れるのは踊り、
ターンテーブルで
Rhythim is Rhythimの”Strings of Life”が
逆回転する、フロアを回るキック、スネア、
うきうき異言はわくわく基体、
やわらかいつむじ風みたいな女はピンク、
おおきくピンクの髪の女が吹いてつくるしゃぼん玉
をおおきく、デリックは言った
リュブリャナでだったか東京でだったか、
イビサみんなふざけすぎだめだよ、
の声をおおきく収めたしゃぼん玉、
ピンクのトップレスの産毛がひかる髪の女はうまく踊る、
しゃぼん玉のまわりを回る、踊りはあいだを流れる、
ハンズ・イン・ジ・エア、かの円い錠剤たち、
くらげが飛んでいる巨大なスピーカー
のうえで少年たちが性交している、
氾濫の皮膚は汗腺から滾りあふれる幸福、
身体のある器官(身体である器官)、
金色にひかりながらデリックが駆けてきて言う、
イビサみんなふざけすぎだめだよ、おおきくしあわせに
笑顔で、うきうきしゃぼん玉はわくわくピンク、
鼻腔が潮風の錯覚をこすってゆく、
Café del marから西日が日へ戻ってゆく、
夕日がのぼるまで旅のピープル踊る、
ピープル、踊る、逆に、
橋を渡るものは川を渡る、川は水を流れる、
橋のうえから大聖堂の頭がみえる、
ここでデモのパレードが聴いたのは
Primal Screamの”Know Your Rights”
(The Crashのカヴァー)だった、
クリミナル・ジャスティス法、に反対である、
ビートビートビート反復的ビート、
は禁止された屋外では、
では、
しかしもう手遅れなのさ、
あの陰気だった国民性をたった十年で
変えてしまったかの円い錠剤たち、
からだから滾りあふれる幸福、ハンズ・イン・ジ・エア、
ターンテーブルで
X-Press 2の”London X-Press”が
逆回転する、スポットライトへ光が吸い込まれてゆく、
くるくるキックの音がうきうき転がる、
転がって垂線を垂らす、四隅へ、わくわく星団の四隅へ、
とうめいのさかなの尾鰭は美味しくないなんて言うのは誰?
と言うのは少女、もちろんとうぜん美味しくないなんてはず
ないさ言うのは食べたことがない奴らさと言うのは少年、
オデュッセウスを流れるものはダンスを流れる、
ダンスはあいだを流れる、碑銘の轍のいちにちのように、
熱のある
ねばり気のある
オレンジ色のしあわせが
指先から放射してゆく、溺れそうになる、
水のなかでも息ができる、
Underworldの”Cowgirl”でハンズ・イン・ジ・エア、
ロイテ、踏め、逆に、
むかし、”‘Heroes'”が録音された、恋人たちの、壁の、
路上を歩いてゆく、
Techno Vikingが舗道を踏みつけるときのように、
ストリートとわれわれの関係では、
われわれにストリートを従属させる、
ストリートを支配せよ、
ターンテーブルで
Can-D-Musicの”Navigator”が
逆回転する、水色の髪の女が画面にいる、
人々はしあわせな木々、木々のあいだを、
流れるのはダンス、
流れるハイク詩人はこう問うた、
君の一句は一片のLSDに如くか、
アルベルト・ホフマンは走る自転車でうしろへ、
Techno Vikingが
舗道を踏みつけるときのように、舗道から
足をあげておろす、Techno Vikingは舗道から
足をあげておろす、Techno Vikingの
うしろにオレンジの髪の女がみえる、
曇り空の真下で恩寵の否定辞は靴底
とペットボトルのミネラルウォーター、
水の男が話しかけてきた、
お前はヤパーナかケニシーは知っているか、
男の言うケニシーはKen Ishiiのことだと分かる、
“Pneuma”のヴァイナルをもっていると答える、
愉快だ、きょうのMaurizioは”Quadrant Dub”だ、
さらさら足を地から離してキックの音で地に
ひらひらつける、愉しい、
路上はわれわれに連れられてゆく、
にんじゅ、かがへ、かへりて、
新宿はLiquidroomを夜して、
青山はManiac Loveを朝して、
馬込のマンションの八階は、
Manuel Göttschingの”E2-E4″が
逆回転する、車座をバッズが回る、
田町のハマ君は栽培する、
ハマ君は田町のオフィス街でカレーの
屋台を経営している、天才的メイカー、
ペイズリーの敷布は畳のうえで、畳はぐにゃぐにゃまがる、
まがる、みんな笑う、キミコさんは上半身裸になっている、
ジョージは全身裸になっている、
ジョージのやわらかいペニスが口のなかにはいってくる、
ジョージは軍人の黒人、
キミコさんは僕のペニスをしゃぶる、リエはけたけたと笑う、
ビールをあける、ドクターはスーパードライをあける、缶の、
暑い、時間がまがる、
みんなつむじ風みたいできれい、
みんな湯のような穂で、皮をかぶった翅だ、
ドクターが代々木公園に行かないかと言う、
昼からのパーティが代々木公園は夕方になるころ、
みんな電車でゆく渋谷、
公園通りできのこを買ってゆく、
公園は焚火を誰かがしている、爆音、みんないる、
トコちゃんおっす
とトコちゃんに言う、おっすとトコちゃんが言う、
ターンテーブルで
Basement Jaxxの”Samba Magic”が
逆回転する、坊主頭のイスラエル人が座ったまま言う、
チイサナ・シアワセナ・ニポンジン、アツマレ、