短歌は変化している。昭和から平成にかけての二十数年はもちろんのこと、二十一世紀に入ってからの十年間でも、短歌は確実に変化を続けている。それは、短歌が時代と共棲している詩形式だからだ。
風俗史としてたどれば、たとえば、サラダ記念日ブームがあった。俵万智歌集『サラダ記念日』が刊行されたのは昭和六十二年、西暦では一九八七年のことだ。五七五七七の定型に居心地良く収まった口語と文語の混交した言葉は、バブル経済期の浮かれた気分に同化して流行現象となった。その時代からすでに二十八年。まさに、はるばる遠くへ来たものだ。
とはいえ、短歌という自己表現をみずからの意志で選択した以上、その変化から目を背けることはできない。万葉以来千数百年の歴史をもつ詩形式の眼前の変化を、自分の実作をふくめて、体現できる場として「詩客」を存在させたいと思う。