箱庭 萩野なつみ
そう
瞼を失くしただけの
私の白鳥
伸びていく雨の稜線に
もう戻りはしない
亀裂の走る踝は白昼の月となり
しずまりかえった庭を泳ぐ
知ることもなく
瞑目する陸
繁るに任せた茨から
うつくしい腑がのぞいている
生まれ続ける消失
満ち引いて
ひときわ震えたのちの
誰も触れえない虹のたもとに
白い腕を咲かせて
焼結された
声帯のまだ向こうに
あるいはおまえの星夜が広がること
断線して
なお開かれて
停泊する庭で
饐えた胎動がなお
一滴のために紡がれる
身動ぐことなく
その視野に満ちる名を咀嚼して
羽化を待つ