一月一家 石川美南
昨日今日つづく怒りのふつふつと煮えてふつつか者のわたくし
くし切りの南瓜を口にはめながら長い昼餉の母娘の会話
弟はますます白熊めいてきて白熊の手に手巻き寿司あり
束の間の帰省よ(あの子立つたままずつと酢めしを扇いでゐたわ)
粗大ごみ回収車狭い路地へ来てその場で砕く三脚の椅子
北風は吹いて途切れて誰ひとり当たらなかつたイントロクイズ
本物の草だと先に目が気づき、すこし遅れて手が触れにゆく
尾根道に温かな石 手術後の経緯つぶさに語りつつ笑む
寒き夜の傘立てにして念入りに確かめてゐる鍵のあけかた
その舌で舐めてもよいぞ 丘に立つ塩の柱は風雨に強い
作者紹介
- 石川美南(いしかわ・みな)
1980年生まれ。短歌同人誌poolおよび[sai]のほか、さまよえる歌人の会などに参加。橋目侑季と共に「山羊の木」としても活動中。2011年、双子の歌集『裏島』『離れ島』(本阿弥書店)を上梓。