三方原には風ばかりが吹き   齋藤礎英

三方原には風ばかりが吹き   齋藤礎英

三軍を羊の歌で叱咤して

優曇華の花を合図に拳をだし

梅の間はボンボンだけの鞭の数

退屈は琥珀のなかの虫となり

陥穽の古びた店の平野水

兄嫁が窓からみたる片男波

ぬばたまの情けないことになったねえ

梅雨寒や五臓にあいた鼠穴

物言わぬ口 黄色い町の鉦の音

曼陀羅に窓を描きたす贋作師

作者紹介

  • 齋藤 礎英(さいとう・そえい)

略歴 一九六四年生まれ。『鬣』同人。「逆説について」で第四十回群像新人賞評論部門受賞。著書に『幸田露伴』(講談社)。

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