鳥籠は鳥のやうな何かを得る SST
霊辰やルービックキューブ畳の上
巻貝のなかへひろがる梅ばやし
防護服防護手袋朧に触れ
木犀の獣の我の透きとほる
スフィンクスの脂や愛や春の泥
諸星大二郎ゑがきし弥勒つちふれり
枝々にたべものを吊る風のならはし
リムジンの胴伸びてゆく涅槃かな
合はせ鏡に棲む春潮を挟み消す
タクシープールタクシー満てり花の夜
先端にハリガネムシの目がありぬ
透明なのだと言ひビニールを海苔ずり落つ
絵の我へ少女らの尾のかげろひ来
テトラポッドの股なつかしく春の雨
自転車のぷるんぷるんと風ひかる
にんにくを置く停電や髪伸びゆく
水母らを桃になるまで照らしたる
宴会場まで甲虫ゐて誰も裸
芽キャベツのうつらうつらと踊りくる
鳥曇ひとりひとりの部屋が連なり
鳥として空室啼きぬ春の昼
部屋の隅に座す風船をカヲルといふ
沈黙は金なり鳥は囀れり
太陽におたまじやくしに顔がある
亀鳴く時ちやんとしてゐる越智見ゆる
観覧車の男は蜂の巣ださうだ
友の睥睨白目に残る
髪洗へば散らばる小銭中島らも忌
いろんな紐が蟹を引つぱる当り籤
執筆者紹介
- 榮 猿丸(さかえ・さるまる)
1968年、東京都生まれ。2000年、「澤」入会、小澤實に師事。2004年、澤新人賞、2010年、澤特別作品賞受賞。現在「澤」編集長、俳人協会会員。共著『セレクション俳人プラス 超新撰21』(邑書林)。
- 関 悦史(せき・えつし)
1969年、茨城県生まれ。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞、第11回俳句界評論賞受賞。「豈」同人。共著『新撰21』『超新撰21』(邑書林)。
ホームページ http://etushinoheya.web.fc2.com/(管理人は別人)
ブログ http://kanchu-haiku.typepad.jp/blog/
- 鴇田智哉(ときた・ともや)
1969年木更津生まれ。第16回(2001年)俳句研究賞受賞、第29回(2005年)俳人協会新人賞受賞。句集に『こゑふたつ』。「雲」編集長。
芽キャベツのうつらうつらと踊りくる SST : spica - 俳句ウェブマガジン -
on 5月 22nd, 2011
@ :
[…] 「鳥籠は鳥のやうな何かを得る」(詩客、2011.5.20)より。タイトルが一番好きだったりする。 […]
俳句時評 第6回(山田耕司) | 詩客 SHIKAKU
on 5月 27th, 2011
@ :
[…] フォーダンスという視座を提案していた関悦史、そして榮猿丸、鴇田智哉の三人からなるユニット<SST>が、まさしくこの「詩客」に発表した実験作品「鳥籠は鳥のやうな何かを得る」。 […]