邂逅 岡田ユアン
ぬかるんだ夜の中へわけいる
窓が風を招いたすきに
港から汽笛が聞こえた
それは水先人のように
刻の交代を告げる
元素は素直に刻の声を聞く
私はゆるみ 輪郭をとかし
ほんの少しばかり体積を減らす
夜のあいだは
書きかけている手紙の
次の言葉を故意に探す必要はない
ただ鼓動を感じ
身体の定律に耳をかたむける
束縛のない発話を夢見て目を閉じると
子供の頃に見た夢が映る
青黒い海の中をシロナガスクジラがのけぞり
光がとどく水面へ浮上してゆく
それは果てない浮上
私は漂いながら
シロナガスクジラを見ている
海はあまりに深淵だった
寡黙で
全てを許容する安寧は
恐怖と等しい
風が産毛をなでる
馴染んだ重力が
別の景色へおろす