第10回詩歌トライアスロン 選外佳作④

第10回詩歌トライアスロン 選外佳作④

三詩型融合作品

盗掘 巽野

肌の上から
触れさせてもらう骨
あなたを雪に喩えたとして
雪の下の
土の中に
眠るあなたの白い骨に
ずっと触れたいと思っている

雪景のジグソーパズル直線を拾い外堀から埋めてゆく

多ければ多いほどいい過去を伏せ右手でトランプをかき混ぜる

天気など話題にしつつ遠からず斜塔は音を立てて崩れる

絶え間なく床を濡らしてゆく傘を立てかける壁 眠らせてくれ

湖の深さをはかる静けさで鏡に口付けるように言う

紅茶、飲みますか?ときみがいう
自分で淹れるときは珈琲だけれど
もらうことにする
磁器製のティーカップに
注がれる透明
目を伏せて
きみが下ろしてゆく三角錐を
きみが恐れている豪雨くらい
なんてことないのに
と、思いながら見ていた

きみが泣くところが見たい ジャムを手に何を言い出すのかと思えば

暮れなずむ波打ち際をどうしようもなくひとりとひとりで歩く

話せない言語、月より降るひかり。形見だという楽譜をもらう

傷を抱く
真珠のかなしみに触れたいこころと
真珠欲しさに貝をひらく手は
同じで
濡れているような月

寝る前に子どもに読んでやる絵本みたいに弾いて聞かせるピアノ

目を閉じてだんだん海になる人の深くへゆける眠りのくじら

水底に眠る魚の目に映る全ては夢だ 意味を手放す

ラの位置にララララ並ぶ雀の子

かたくなな心であったキラキラと紅茶に落ちてゆく角砂糖

こする ツマモヨコ

自転車に乗れなくなってくださいと途切れ途切れに 春のただなか

やりがいを盾にいくつかの角ばったひかりをもらうひかりをこする

あなたはずうっと
エスカレーターの手すりを拭いていた
薄紫色の布巾から
手を離すあなたにわかる二十余年あなたの姓にある野のことを

春泥が見てた眼鏡のままのキス
触っても気持ちよくない場所がありじきに蓄光してゆく背骨
くちづけの鼻をつまんでして息という息がわたしを責め立てた

抜けたのはでも下まつげだと思う 自虐があらゆる愛を追い越す
季節にいて、ひとなみにハンカチを買うことがおかしい 柄はたとえば
信用と信頼の間に咲くミモザ

春をまた好悪でしか語れない山手線ゲーム未経験者

わたしは受け取ったひかりで半球をつくる
あなたはもうひとつの半球
あなたはもうひとつの半球
あなたの取り落とした布巾では
あなたのひかりを磨けない
あなたはもうひとつの半球
ではない?

青饅のぬちぬちとして目が覚める

ふっくらとしたしがらみを提げたまま立ち止まるのぼりエスカレーター

※掲載はレイアウトの関係で、実際いただいた原稿とは若干異なっている部分があります。ご了承ください。

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