赤い新撰「麒麟から御中虫への手紙だよ」③                 「素敵な説教をしてよ、虫さん」/西村麒麟

虫さま

お返事早くて嬉しいです、ありがとう!東京は青葉若葉の日の光りって具合です、ウソウソ、暑くって嫌んなっちゃいますよ、僕は半袖が似合わないので参ってしまいます。

素敵な彫刻をありがとう!「尖りすぎた麒麟」大変嬉しく毎日眺めています、ただ目に刺さると危ないですね、これ。

虫さん、僕が送った連作「熱海で百句」、赤×がたくさん付いて返って来たけど、あの…、ダメでしたか?結構自信あったんですが…

コメントが少なかった代わりに(×は94個付いてたけど…)俳句を送ってくれましたね、虫さんやっぱり案外優しい、知ってたけど

田舎者諸君!闇も月夜も!田舎者諸君!

僕の連作の内、下五が「熱海かな」という十二句、特に×が大きかったですが、わざとですよね…

普通の人とは違った感覚とやらに飛び蹴り

僕の連作の最後に、下五「熱海だよん」の句を置きましたが、血のような赤線(いや、血ですかねコレ)がグガガっと引いてましたが、やはり、ダメなもんはダメだという事ですか、やや自信はあったのですが

自分自分自分くしゃみ自分自分自分

三〇分かけた僕の写生句の斜め上に爪で書いたような字で「ダレ」と書かれていましたが、…もっとぐいぐい来いという事ですかね

身の丈に合った暮らしを花火で爆破

そもそも僕が熱海を題材にして喜んでるのが、イカンですか

猫にも負けなひ下手な恋愛をしてゐる

僕がデート中に作った(彼女に俳句を送ると機嫌が良い)俳句に、なんだか竜巻みたいに赤でグルグルバッテン、書いてくれちゃってますが、確かにあなたの言う通り、僕にはまだ無茶が足りないようです。

私はどこへ向かふかわからない上機嫌な犬

楽しいとはこれだ、楽しげじゃなく

ひどくカラフルな飲み屋のトイレで若干吐いてくるね

僕は酒の句には自信があったのですが、斜め上にやはり赤で「チガウ」と書かれていました、何が「チガウ」のか、この句でなんだかぼんやりわかる気がします

ピンクのバッグに頭つっこんで号泣

これが本当かもしれません、僕は本当には泣いてないのかも

その単純な思考を仮に馬鹿と呼ぼう

フリはどこまで行ってもフリでしかないわけで、わかっちゃいるけど…、あ、なんでも無いです、言い訳しないです(少し利口になりました)

いつも詩は悲鳴でしかないこと それだけ

雑巾を絞るように、ぐにゆぅ~、っと、そこから出た一滴が本当なんだと言いたいんでしょ?絞るのは痛いけど、やっぱり絞らないといけないわけですね…。

僕の俳句は明るくて楽しくて大きくて、そういう道で良いと思ってます。ただね、時々、ふっと考える事もあります。今僕は本当に面白いんだろうか、これはむしゃぶるほどにウマイんだろうか、それは目が眩むほど美しいんだろうか、ホントに嬉しいのか、僕が詠みたいのはこれなのか…

虫さんの俳句にはその答えがいくつもあるように思えます。悲しい時、わめきながら悲しいと叫ぶのが本当だと思います、ただそれは案外難しいんです。

さてと、僕は来週伊豆へ行こうと思っています、また俳句を送ります。

虫さんもお元気で

ばーい

麒麟より

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