戦後俳句を読む                                 特別企画/ 「季語・季題をめぐる緊急集中連載」②      /筑紫磐井

俳句を作る人を大まかに分ければ、季語を入れた俳句を作る有季派と、季語を入れない俳句を作る無季派とに分かれる。伝統を極力尊重しようとする人と、文学にはあらゆる制約から解き放たれる必要があると主張する人の違いと考えればよいであろうか。ただこうした対立はあるものの、長いこと続いた季語が存在することを当然の前提とすることは両派の人とも否定はしない。だから季語を検索しやすく並べ、その解説を施し、当該季語を使った古今の名句を例句として添えた「歳時記」は俳人の必需品となっている。

 一方で俳句の制作に関心がない人であっても、季節の言葉を知ったり、特に季節にふさわしい俳句を検索するために、歳時記を活用する人は多くいる。特に、日本の詞花集として、中古・中世の勅撰和歌集に匹敵する手頃な近世・近代の詞花集として歳時記は尊重されている。

こうした季語の体系、特に歳時記の考え方は、中国から渡来し、古代日本で採用された24節気という季節の分け方に従って編纂されている。二十四節気とは、陰暦の月のずれを調整するため一年を二十四等分して示す基準点であり、古代中国で発明された。具体的には、やや寒くはあるが春は立春(2月4日ごろ)から始まり、まだ暑くはあるが秋は立秋(八月七日ごろ)から始まると言うのが二十四節気の考え方である。二十四節気の立春や立秋は季節の先駆けをとらえようとする独自の思想であり、その由来から立春などの名称と実際の季節感(春)のずれがしばしば指摘されているが間違っているわけではない。例えば立春の直前は最も寒い大寒であり、立秋の直前は最も暑い大暑である。「暦の上ではもう春で」などと気象予報の前置きで言われている「暦」とはこうしたことを言うのである。

ところで最近ショッキングなニュースが報じられた。暦を所管すると思われる日本気象協会が、「日本の気候風土に合った新しい二十四節気を提案する」というのだ。すでに八人の委員からなる日本版二十四節気専門委員会の第一回会合が昨年十二月八日に開かれ、今年の二月十日には委員たちによるフォーラムが池袋メトロポリタンプラザビルで開かれた。また、六月五日には上野公園で街頭インタビューを行い九九人の人から意見を求めたと言う。予定は着々と進み、本年秋には日本版二十四節気を提案し、普及するという。これが完了すると、立春とか立秋は消滅してしまうかも知れないのだ。

もちろん、時代によって季語や季節の言葉が改変されてゆくことはしばしばあるし、国民が選択して自然に推移して行くことは当然であるが、おカミが決めた季節の言葉というのはあまり国民に普及するとも思われない。少なくとも一斉に号令をかけて、気象予報の時に立春や立秋という言葉を科学的でないから使わないよう指示を出し、生活の中からに立春や立秋という言葉を消し去ってしまうのは問題であろう。

例えば、あまりその由来を詮索されていない言葉だが二十四節気に由来するものに八十八夜、二百十日、二百二十日、寒の入り、土用丑の日などがある。それぞれ生活になじんでいる言葉だが、科学的でないからと言ってこれらを排除することに意味があるとも思えない。

こんなことで、二四節気を考えたいと言う有志が働きかけ、季節の問題を考えてみたいと思うのである。伝統を断固守れといっているのではないが、季節の文化の破壊に手をこまねくことがあってはならないだろうという趣旨なのである。

『第4回こもろ・日盛俳句祭』

◇開催日 平成24年

  • 7月27日(金)28日(土)29日(日)の3日間

◇会 場

  • 小諸市民会館1階  (受付・俳句祭事務局)
  • 小諸市民会館2階  (俳句会)
  • コミュニティセンター(俳句会)
  • ベルウィンこもろ  (講演会・シンポジウム・懇親会)

◇日 程

*3日間共通の日程

27・28・29日  受付       8:30~11:00
(市内吟行・28日高原列車吟行句会・28日29日高峰高原吟行会)

27・28・29日  俳句会     13:30~15:30
(5句出句・5句選)

*毎日内容が変わります  

7月27日      記念講演会  16:00~18:00
7月28日      シンポジウム 16:00~18:00
7月27日 28日   懇親会    18:00~19:00
7月29日      さよならパーティー 16:00~17:30

◇記念講演 7月27日(金)星野 椿氏(「玉藻」主宰)

◇シンポジウム 7月28日(土)
テーマ「私にとって季語とはパート2」
司会者・パネリスト スタッフ俳人から選出の予定

参加にかんする詳細は次のホームページにアクセスしてください。

http://www.city.komoro.nagano.jp/www/contents/1275452844718/index.html

◇スタッフ俳人 次の方々が句会での「進行」をお手伝いします。

藺草慶子 井越芳子  石田郷子  伊藤伊那男  今井聖  奥坂まや  櫂未知子  
片山由美子  岸本尚毅  神野紗希  小島健  小林貴子  島田牙城  高柳克弘  筑紫磐井  対馬康子  土肥あき子  仲寒蝉  永方裕子  西山睦  星野高士  
本井英  山田真砂年  山西雅子
(五十音順:敬称略・一部交渉中)

タグ: , ,

      
                  

「季語・季題をめぐる緊急集中連載(筑紫磐井・本井英)」の記事

  

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress