やがて街になる   山﨑修平

20181020_shi

やがて街になる   山﨑修平

一艘の船に乗る虚像と挑発的な使命感のある雷光との友誼の話し
つまらない話になって申し訳ないと彼は頭を下げた
大して会話を交わすことなく残滓にある残滓でないものを渡す
それは、あまりにも出来過ぎた話であるから越冬地を急ぐ
無論、ここではない場所のことを指す
蔦植物が夜明けに繁茂するという
すでに欠片となっていたものを集め仲間を呼ぶ
繁茂している
私は旧友のことを思い返していた

色彩がまだ香りであったころに知り合う
二人が三人となりやがて街になる
喩えるなら楽隊のようなものに
先導されながら街の外れまで足を弾ませて歩く
ことばは届く

発音はうまく聞き取れない
履き慣れたジーンズにアルコールあまり知らない街ではなかったはずだから
港町の生まれであるからという
紅色にせり上がってくるもの過ちのようでもあり希望でもあった
愛玩動物のように狙い定められた銃器のように恍惚としていた街に横たわる
声を出して笑うRやC、みなそれぞれに死体をまとわせていた
「どなたかいませんか?」
無表情というよりは表情を作らないようにしているのだろう

私は触れられていた
一枚、また一枚と、検めるように素肌をさらしていく
直線的な欲情に華々しい機会を与えているのは
それが未だに成し得ないことからくる
私たちは枠を設けている
ところで、
一度剥がしてみたらどうだろうという提案をする
炸裂する
炸裂する
再び言葉を発すると大部分はいなくなっている
今朝はじまり今夜に終わる何らかの取り決めのような風を信じている

浮上する羽と食卓のウスターソースにあるいはバラバラの散歩道に重なりあう

つがいの鳥、溶け出す料理、ぎこちない挨拶、私はその通り好きですと話した

ここからは展示されているものたち

氏の言う通り瓶に収められているものはすでに流れ出しているものたち
明るく華々しく人を導くような勇ましい音楽でもある
私はかつてのように敬礼をされ今見ているもののことを告げられている
それは壁と壁との隙間に展開されている即興的ななにかのようであった
愛のことのようであった
意味のないことを、何も意味しないことを、と冗長に語る

棲息しているものを閉ざすねっとりとした指の動きを地上はことのほか喜んだ

次々と届けられて祀られていくその中のたった一つを選ぶ
「見ているものを信じる? 意味のないことの方が大事だ」
乾いた唇の、あまり参考にならないような道案内の、それでも
たった一人の祖国の英雄のように私はあなたのすべてを肯定する

無音に開くそれが全てだ
私の持つ力
あなたの持つであろう力
全てこの有様だ
残されたのは卓上のろうそく

それでも私はこの人たちの幸せを願ってやまない
この人たちの喜ぶ顔を見たい

口からこぼれた
しずかにもう一度宣言のようなものを伝える
色彩がまだ香りであったころに知り合う
二人が三人となりやがて街になる

船はしずかにさまよう
まったく何も意味しない
美しく響いていたものだから声をかけた
オレンジ色の髪飾りのようなもの
薄く青くほぼ透明な織物のようなもの
そのどれもがないものでないからこそ知り得たものだった
悔いのないことを知らせる旗、私たちは掲げない、捨て去るのみだ
それはつまりやさしさにも寂しさにも囚われない
昂ぶるなかで私は掴み、私へといざなっていた
放送を終えたテレビとしずかな苛立ちのなかに明日聞かされる反抗を知った

スペルを伝える電話口の相手
駅まで走る人の形をした人
そして、何より私は私と対面をしていた

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