飴色の洞        遠藤由季

  • 投稿日:2012年10月05日
  • カテゴリー:短歌

飴色の洞     遠藤由季

なんというさびしい運命共同体あんなに高圧電線離れて

ドトールはどこにでもあり想い出のいまだなき灯にひとりこもりぬ

腕時計ばかりを味方にしておりき時には月のように照らして

音のなき時計、狂いのなき時計あなたの部屋にはどんな時計ある

飴色の洞なるドトール入る人も出でゆく人も影やわらかし

こもり照る灯りなれどもわたくしを照らせるあかりカフェもあなたも

一行のメール呼び出す すじ雲を飛行機雲はつらぬきゆけり

寒い日に逢えば覆われいる肌よこころの木立ふるわせてみたし

読みさしのウィトゲンシュタイン繰りゆけば開けたばかりの酢の香思えり

いちじくを煮る夜であるわれのため、いいえ眠れぬあなたのために

作者紹介

  • 遠藤由季(えんどう ゆき)

かりん所属。パン好き。
2004年、中城ふみ子賞受賞。
2010年、第一歌集『アシンメトリー』出版。第11回現代短歌新人賞受賞。

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