花図鑑(抜粋)     山中千瀬

  • 投稿日:2013年07月05日
  • カテゴリー:短歌

山中短歌130705

花図鑑(抜粋)          山中千瀬

花図鑑より……ワスレグサ、ナルコユリ、ハナミズキ、ラナンキュラス、オミナエシ、カキツバタ、ミスミソウ、サルスベリ、ヘビイチゴ、ユスラウメ、クレマチス、カサブランカ、ヤマナラシ、アスチルベ

悪いことするひとになろう連絡橋のグリーンあわくさようなら春

ならこれはルールなどない恋 こわれゆくものばかり輪廻を語り

反照のなかでふたりは見つめあいズームアウトがきれいにきまる

ラストシーンを何回も見た。急にもたらされた解を好きになれずに

おそいねって見ていた窓をなんでもない画を降る雨のしずかな影を

片方がきみだよ いつか梅雨晴れのバスに並んで立っていました

未練なんてすでにないのだみずぎわに沿ってあるけばうるむ両眼

「最後の人類になったらすべて捨てて別の星までリープしようね」

減らないね、瓶詰めされたイカのわた 千代に八千代にごはんをおもう

たちまちに町に立つ風 ついに順番がまわってきたのだ、ゆこう

許してほしい すぐにあたしは来世なんてうたって死をほのめかすのでした

くちぶえの練習をする真夜中に地図上の点のすべてをつなぐ

かさなったさきのことなどブラジャーに爛漫と咲く花実なでつつ

約束はまだ必要じゃない ふたりライムライトのしたで踊れば

あんまりはやく過ぎてゆくから散らかったルームそのままべらぼうな旅

作者紹介

  • 山中千瀬(やまなか ちせ)

1990年愛媛県に生まれる。2009年より早稲田短歌会に参加。「唐崎昭子」名義でデザイン・装丁の活動も多数。

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