残像     雲嶋聆

  • 投稿日:2013年09月20日
  • カテゴリー:短歌

雲嶋短歌130920

残像     雲嶋聆

あきかぜに秋桜ゆれて思ひ出は真夏の雨のにほひを醸しぬ

ふりそそぐ夏の光を吸ひこんで草生は雨後の雨に耀ふ

一面にひろごる緑のまぶしくてふつと目をとづ 八月の景

豊川のほとりにひとりすつと立つ月桂樹 なつを照りかへしつつ

真夏日のうたたねの夢は昼下がりの空のあはひに舫ふごとしも

じつとりと光は草のもとふかく沈むごとしも 残暑に喘ぐ

街路樹にはりつく蝉 の翅 ガラス細工のごとき光のなかで

ギヤマンの空にましろく浮かびをる日輪を指し虫は飛びたつ

黄昏の光せつなき夏の空おもひでは風に消えゆかむとす

こもれびの幽かにゆれてぼんやりと白く佇むかげなつかしや

あの夏のむかふに君は消えにけり線香花火の余韻をのこして

作者紹介

  • 雲嶋聆(くもしま れい)

1989年滋賀県生まれ、愛知県在住。
2012年より中部短歌会に所属。

タグ: , , ,

      

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress