愛と答えん     小川汐梨

  • 投稿日:2013年10月11日
  • カテゴリー:短歌

小川短歌131010

愛と答えん       小川汐梨

少年の秘密はベッドの下にあり覗く女に照準合わす

違和感をうっかり拾ってしまいたる女の勘ってやつが恨めし

ガリガリ君食べるいつもの横顔をひそかに見おり探偵の目で

線路沿い濃い影のなか立ち止まるかすかに壊れゆく蝉の声

ごみ箱のレシート漁る姿もし見られたらこれは愛と答えん

陽だまりの草に寝転ぶのどかさでこの部屋にいたわたしはだあれ

道端で潰れていたるカマキリの若草の色なおも清しき

甘えられるただ一人かもしれなくて歯医者にあああと口開きおり

神経を抜かれたはずの歯が痛む抜いても抜いても神経はある

背信は私の指を操って唇の皮を剥かせ続けた

許したい許したくない秋告げる天気予報が遠く聞こえる

作者紹介

  • 小川汐梨(おがわ しおり)

1985年生まれ。東京都在住。
歌林の会所属。
2011年「かりん賞」受賞。

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