てのひらの肉薄ければ    森下 裕隆

  • 投稿日:2020年06月06日
  • カテゴリー:短歌

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てのひらの肉薄ければ    森下 裕隆

てのひらも切手を貼れば届くのか(はかりしれない痛みだろうな)
里長に鼻を削がれた母親のその後をだれも知ろうとしない
紀伊國屋書店で寝たら死ぬぞって頬をぴすぴす叩いてくれよ
もう二度と愛に苦しまないように触覚は二本とも抜いてやる
かたつむり修繕人が手を拭いたハンカチだろうきらきら過ぎる
汽車なんてつまらないよと少年は汽車より遠くへ行ってしまった
暗雲が暗雲を追い越してゆく(誰のせいでもなければ誰を?)
百本の毛深い脚が駆け抜ける春のゆうぐれ息苦しいよ
対岸、と思うなら手を、てのひらの肉薄ければ千切れるほどに
「手の届きそうな月です」髭の濃いメイルマンにも教えてあげた

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