ガーベラ    さとうはな

  • 投稿日:2021年12月18日
  • カテゴリー:短歌

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ガーベラ    さとうはな

みな死ぬと思えば朝はうつくしく結露の窓をクロスで拭う
人と会うことなく過ぎる一日よポットに花茶をひらかせている
みずいろのベスパを路肩にひからせて人でなければ鯨だろうな
船だって言い張っているエッシャーのしかけ絵本に落ちた花弁を
やわらかな声帯を経てわたしへと届く音だな目を閉じて聴く
こころだけがあなたを求める明け方のつめたい水で顔を洗って
静けさに気づけば雪夜 うつし世に冬とは白い角の牡鹿か
佐太郎を褒めるラジオを聴きながら花瓶の水をほそく逃がした
まぼろしのようにはなやく街道に近づいてくるサンタパレード
依るものがほしいのだろう楡の下、ベニエの屋台の列に並んで
逃走と喩えて越える市ざかいに時おり雪へ変わる霧雨
どれほどの沈黙だろう夢に立つような塑像をゆびでなぞって
予報図にLight RainとあるときのTrainな感じモニターに見る
戻ろうと呟いたのちべっ甲の髪留めはまたあなたの髪へ
まだ暗い水辺で砂を蹴りながらあなたが話すふるさとのこと
母国語にガーベラの意の名をもったひとだひかりに向かう横顔
スタンドでカフェラテふたつ買ったこと忘れないでね/忘れないから
たとえば、で始まる手紙 箔押しの雪の模様が涙みたいだ
炎だと言えばよかった異国語で問えば答えもまた異国語の
転生は信じていない 割れやすい冬の薄日を両手に受ける

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