挽肉機に押し込まれゆく肉として自動改札まえのこんざつ
飛天とぶやまとの空は遠くして会議のあいま窓を放てり
空覆う雲一条の晴れ間あり高層ビルに裂かれし傷なる
IDカード拒絶されけりわたくしのどこかガラスの割れる音する
きみの頭上に架かる電線 周波数ちがう電気が流れてること
渡された本にはきみの脇腹の体温沁みおり『唯識入門』
秋明菊かぜになびけば薬師寺の日光菩薩のこしつきをせり
刻まれてのち一千年 手をあわす菩薩のかたちの木のいっせんねん
千手観音の変化(へんげ)にあらんドラえもん笑みつつ四次元ポケット開く
神殿の柱をかめむしのぼりゆく その前にわがかしわでをうつ
作者紹介
- 大井学〈おおい まなぶ〉
1997年 歌誌「かりん」入会。