La petite mort 中家菜津子
君から
死にたいというメッセージが
ひかりながら届き
あ(かるさ)だけになって
優しく君を死なせたかった
製氷皿に青く輝いているのは昴
一億年をただ燃え尽きるために
存在している星々を数個
コップに入れると
透きとおったものに
すきとおったものが
跳ね返るときの音が響いて
(((フェルマータ))))
四隅の壁が意識の外へ遠ざかる
膨張してゆくユニヴェール
だから(すき)まに
アルプスの炭酸水を注ぐと
激しく発泡して
誰かの時間を早送りにしながら
溶けていった
これでもう虫籠の蛍はひからない
雌雄の区別なくゼンメツさせたんだ
最初から空っぽだったから
生まれたての闇の密度に君は安心していいよ
息を深く吸うとき肺は奈落に落ちてゆくけど
鉱水を啜って満たしたからだが発光するから
うちがわからさ、溺れてしまおう
*
天の川銀河に沿って君とゆき帰りにひとつ鉱水を買う
はつなつの炭酸水をあけるとき封じられてた吹雪の匂い
製造年月日がきみの誕生日だからさ、ばらの花をいけよう
蒼穹にあなたは果てて
君は目をあわせてくれない窓際のクリアファイルをすべる雨粒
”La petite mort”, French for “the little death”, is a metaphor for orgasm.