心裡留保 田島 健一
稲妻や恋人がしょぼくれている
きれいに嫌われてゴーヤカーテンの裏
十月や船の不真面目いろとりどり
ふりそそぐ案山子悲しみ神のいしき
月ふるえ眠れぬ全身鼻唄なの
放送のうつろな町うろつく牝鹿
うっとりと相撲つかれている時間
自転車濡れて全部が濡れて茸狩
林檎凛々しく振り向く鮮やかな家族
秋晴れや裏庭へアナログテレビはこぶ
東京の穴に秋雨あなどる叔母
かりがねのこぼれてシャープして跳ねる
赤と白のゼブラ花野がペットショップ
法典白金みずことばくさことば
花野はねばし急ぐ花屋のお嬢さん
心裡留保また喪失の秋晴ある