琥珀 藤原龍一郎
挫折あらねば無傷なることわりのビオラの弦に触るる秋風
虎死してのち石となる伝説を聞けば南蛮渡来の琥珀
快楽の具体物なれ一匹の虫は琥珀に封印されて
二人いてされど二つの影を曳く孤独ありけりレオン、マチルダ
梨の実の皮の剥かれて行く過程見つめていたり淋しけれども
室温と体温の差の微差なるにエミール・ガレのガラス・紫
デジタルのテレビの画面永遠に森田一義アワーなるべし
パレットタウンいま灰青の景となり大観覧車驟雨の彼方
銃眼を覗きたること無き眼もて されど旧約聖書読まざる
レポーター失踪の後夕陽差す高層ビルの窓の昏き朱