大道大乗歩行―芸能芸術起信考―【十一】
三尺の翁 男波弘志
老いは死の習ひ初めなれ山櫻
三山は大きな山や田螺和
眼のところ少し苦くて白魚和
ブッダさへ残す舎利壺花の昼
なきがらの何持たさるる余寒かな
春曉のどの骨片も鳴らざりき
骨片の中の一つが茎立ちぬ
骨片に手を乗せて浮く蛙かな
母を焼く火の塊りへ囀れり
母焼いてゐる蓬餅食べてゐる
骨片 月光 月光 骨片 壺一つ
母になくて吾にある今蜂唸る
春惜しむ大きなこゑの人とゐて
執筆者紹介
- 男波弘志(おなみ・ひろし)
昭和41年(1966) 真冬 出生
北澤瑞史 創刊 俳誌「季」 元会員
岡井省二 創刊 俳誌「槐」 元同人
永田耕衣 創刊 俳誌「琴座」マンの会 元会員
現在 俳誌「里」 同人
既刊句集 『阿字』(田工房)
合同句集 『超新撰21』(邑書林)に入集