外寝して星の運行司る 五千石
第一句集『田園』所収。昭和三十二年作。
自註には〈カメラを北極星に向けて固定し、絞りを解放、距離を無限大に数時間露出すると星の運行が渦をなして映される。これを「星野写真」と呼ぶそうだ〉と記す。
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掲出句は『田園』の、前回の「日の句」で紹介した〈炎帝に召し使はれて肥担ぐ〉の次の収録句。
五千石には多くの星の句があることは、連載の第1回から第3回等で書き、作品を紹介した。
ゆびさして寒星一つづつ生かす (第1回)
木枯に星の布石はぴしぴしと (第3回)
冬銀河青春容赦なく流れ (第21回)
など、その句の多くは冬の星を詠んだもので、これらは感傷的、感情的であり、季節からしても厳しい冬の印象が強く出ている。
一方、掲出句の季語は「外寝」で夏。「暑さで寝苦しい夏の夜、戸外に寝ること」である。掲出句では、満天の星の下で眠る場面。たとえば高原などでのキャンプなどが想像され、ある種の避暑も感じられる。自註にあるカメラの視点で、星空の下にじっとしていると、目にはその時の点でしかない星々だが、頭の中でカメラのシャッターを解放していると、過去から現在へ星の動きが線として記録されてゆく。星の運行という時間の流れを凝縮するように。
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自註にある「星野写真」という言葉は知らなかった。「ほしの」ではなく「せいや」と読むようだ。一般的な言葉ではなく、夜空の写真撮影の分野で使われる言葉のようである。「カメラを北極星に向けて固定し、絞りを解放、距離を無限大に数時間露出する」というのは撮影手法のひとつで、この他にもさまざまなテクニックがあるらしい。星の撮影は一般的には難しく、私もカメラは使うが、綺麗な星の写真を写せたことがない。ちなみに「星野写真」でネット検索すると、美しい星の写真を見ることができる。
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前述の冬の句とは季節が変わることで、随分開放的な印象になる。だが、掲出句は下五の「司る」に、この頃の五千石の若さと強さが出ていると、私は思う。