第8回詩歌トライアスロン三詩型鼎立奨励賞連載
覚えなき痣 髙田 祥聖
戯れに雄か雌かを決められていつそ孵らねばよかつたか
雪掻きをせずとも雪は消えていく身に覚えなき痣の速度で
無免許のままに言葉を操れば口腔の肉誤りて噛む
歯が痛くなつたことなどないと言ふ君に投げつけられるマシュマロ
訝しむことなく人は列を成す賽の河原に咲く曼殊沙華
さくらさくら定冠詞など脱ぎ捨てて一本の木となるべし君よ
猿あれと言へば猿ある日本史に載せられしひと皆二本足
倖せになれると思ふ平仮名の動物園の「とら」を見るとき
ノルウェーにトロルトゥンガの崖はあり君が佇む塵取りを持ちて
間違つて孵つてしまふ無精卵として望月明日は欠けゆく