地震/津波/原発・美少年  榎本櫻湖

地震/津波/原発・美少年 1
地震/津波/原発・美少年 2
地震/津波/原発・美少年 3

地震/津波/原発・美少年  榎本櫻湖

海の帯、
沈みかけた陽に浜辺は暮れる、
斜めから、
足をひきずりながら、
毟られた蝶の羽が散らばっていて、
慌てふためく、
魚たちの嘆きを、
 
 
……天空から皮の剝かれた蜜柑がいくつもいくつも降ってくるので、
川を溯るざわめきは渦を巻き、絡まる蔦に足を捕られて、前へは進
めない、いや、見えない、鏡は割れ、その罅からまっしろな、蜜柑
の筋が、徐に、伸びてくる、のを見ている、冥府の王……
 
……フランス映画は胡瓜を齧りながら戯れる昆布を眺め、波の飛沫
に洗われるラッコの微笑ましい様子に手をうつ、叩く、手紙をした
ためるための肘から先の部分を放り投げ、蔓に縛られた肢体は、狂
おしく舞う雪に埋もれる宿命に雄叫びをあげる、北叟笑む……
 
 
不埒な削除よ、
発光しながらたゆたう、
野鼠のように忙しなく震えて、
背中を這う穴熊、
聡明でありつづけようとした山野は、
燃えたつ森の息吹に戦慄き、
閃きをまえに眩ませる眼、
 
 
……朝陽と対峙する雅やかな汚物よ、あるいはバナナを腐らせる黒
い雨、(ぼくは音楽家、電卓片手に)、頭部を捥がれた線形の糖衣錠
に跨がり、(足したり、引いたり)、恐怖に怯えるものどもの悲鳴は
美しくけたたましい野次に冷たい笑みを齎す、(操作して)……
 
……螺旋を辿るように手折られた指を呑みこむ時の喉元に髑髏、硝
子体は抉られた恥部に嵌められて、融けだす脂肪を啜る蠅に、仄め
く蟹の節々、流れる血は絶えず人々を嘲笑い、青紫色に染まった唇
はお茶を沸かしたり嚙みつかれたり、誘惑は幻の燭台……
 
 
死者たちよ、
刳り貫かれた胴体に灰を詰め、
温泉に浸かる愚かな民草、
針は逆さまに回転しはじめ、
囁くように問いかけ、
鉄骨に吊るされた鮮やかな死体に叢る虹彩、
甘い罠へと、

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「作品 2011年8月19日号」の記事

  

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