傾く日に 渡辺玄英
眼の中に日が傾く
傾く風が傾く人が傾く
(吊り下げられた(風景はまるくゆれている
それはここが
埋立地だから(というわけでなく(ゆれていた
まっ白な校舎だから(というわけでなく(ゆれていた
眼の中に傾いていく日がぐらぐらと零れていく
傾きながら
遠ざけられていく風景の中で
(風景はまるくゆれている(いない
(遠くからいくつもの足音が近づいてくる
影は階段を上らなくてはならない
(風は吹かない(声はなかった
屋上まで上らなくてはならない
(遠くからいくつもの足音が近づいてくる
地平線は傾く(だろう(もろともに
空が灰色の海になるときがくる
(声はなかった声は(どこにも
眼の中に海が傾く(あふれそうだ
どんどん近くなる(あとすこしだ
傾きながら
小さなガラス瓶に草花が挿してある
澄んだ水のなかに根がひろがっている
白い根がからみあって