魔術師 いざ! 八木忠栄
鬼瓦
そいつをまたいで屋根に立つ
赤いシルエットの魔術師
いざ!
じぶんの口のなかから するどい剣を
何本も何本も引き抜いては
頭上のよごれた浮雲に突き刺す
ホ、ホイ
踊るような身振り
子供たちがおおぜい集まってきて
キャアキャア
きたない歓声をあげる
でも 魔術師はねむらない
いざ!
イワシになった子どもたちはみな
うつろな目と口だけになる
おとなたちはみなどこかへ消え失せた
魔術師の赤いシルエット
その美しさ……
彼はいったい何者?
いざ!
やっちまえ!