下り 相原かろ
線路脇を草ぐさなびくに法則を見い出さんとてまんじりと見る
照明が点いていないとこんなにも暗い電車に運ばれていた
なにがなし鼻はしきりと袖口に寄せて灯油のなごりを求む
吊り革がロシアンルーレットになっている車輌はなけれど吊り革の数
端っこに行きたい自分をつらまえて真ん中の席座らせてみる
吊り革の輪っかに傘の柄がかかり傘の腰巻きあたりから腕
親指と人差し指に耳たぶをつまんで下へ引っぱるしまし
渡らせるもの何もなき時を橋ふくだみてちと砂をこぼせり
立ちくらみしつつあたまの白銀にひらくべき戸が在った気もする
電車から見えては見えなくする町に踏切りを待つ人などはいた
作者紹介
- 相原かろ(あいはら・かろ)
相原かろ 昭和53年生、塔短歌会所属