なまこサバイバル 野村喜和夫
ほらほら、
われわれのわたくしは、
骨のないところをみせて、
なまこサバイバル、
生ける灰に擬態したそのつつましい表皮をみよ、
砂地では砂になりすまし、
砂に呑み込まれ、意味もなくぐねぐねとうねったりもする、
そのくせ、それが逃亡のはじまりなのだ、
ほらほら、
われわれのわたくしは、
なまこから紐が、言語という紐が出て、
亡霊となってはばたくおのれの未来とか夢みながら、
そのかすかな痙攣、
なおも紐は考えているのだ、
この水圧のような重苦しさは何なのか、
どこからどのようにそれはやって来るのか、
するとその問いが、
骨のない頭のようにむき出されてくる、
なまこサバイバル、
なまこサバイバル、
ほらほら、
われわれのわたくしは、
なまこなまこなまこ、
仮に精神というものがあるとすれば、
そのどん底をゆっくりと這い、
もとよりゼラチン状で、
仮に千もの破片にそれを切り刻んだならば、
千ものそれが再生するであろう、
その錯綜した眠りのなかに、
あらゆる名のゲームを、
それが戦争であろうと愛であろうと、
くるみ込み、溶かし込み、
許せ、なまこが行為しているのではない、
行為がなまこを、
突き抜けてゆくのだ、
それほど頭を無頭のように揺らして、
方法でもない、技術でもない、
頭を無頭のように揺らして、
ほらほら、
われわれのわたくしは、
わたくしのわれわれへと反転し、
たくさんの笑いの襞、
たくさんの、たくさんの裸の特異点、
そうしてついに光を発し、糞尿のような光を発し、
もうなまこなんか知らない、
ああ誰かさん、わたくしを皮膚せよ、
扉せよ、骨せよ、
わたくしは大胆してやろう、
彗星してやろう、ついにニチリンヒトデ来たれり、
まで、自在に動く触手と、
ビロードのように柔らかな表皮と、
ついにニチリンヒトデ来たれり、
まで。