Thursday, May 10, 2012
聖杯     野村龍

Thursday, May 10, 2012
 
聖杯             野村龍

蜘蛛の巣で出来た金のzodiacから 
朝を紡ぐ蚕達が一斉に零れ落ちる 
 
萎えた足を伸ばした すぐそこの水面で 
まるまると肥えた猿の思惑が 浮かんでは沈み 
 
額から 瑪瑙を押し込まれると 
脳は 大切なのにたちまち破壊される 
 
赤い眼の雨蛙を無粋に齧りながら 
物憂い稲妻は 午後にゆっくりとやって来る 
 
《みて! 
ここだよ ここにいるんだよ!》 
 
もうすぐ 聖人指定のフィルムが発火する 
少し乳臭い朝鮮人参は たちまち粗野になり 色褪せ 
 
向こう岸で ふるえる独身が 深く貫かれる 
あん! あん! あん! (この行は 不要かも知れない) 
 
血塗れの冷たいピーナツ 或いは 
霧のなかに顕在するキリスト・イエス 
 
芥川さん 
あの 夏の麦わら帽子 いったい何処へ 行っちまったんでしょうね

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