水中眼鏡 山田航
海に血を混じらせながら泳ぎ切る果てにしづかな孤島を見たり
砕け散る水中眼鏡もがいてももがいても瓶詰めの微笑み
輝きを瞳よりも指で感じてる割れた水中眼鏡のかけら
自転車は波にさらはれ走り去るものみな君に届かぬ真夏
水没する向日葵 それを投げ捨てた女は今も船のどこかに
双眼鏡のぞいたままの格好で死ぬ日もきつと朝焼けは来る
粉と化す硝子ぼくらを傷つけるものが光を持つといふこと
硝子片ただよふ海で喉仏もたざるために死ねない君へ
世界ばかりが輝いてゐてこの傷が痛いかどうかすらわからない
水しぶき跳ね上げてもう戻れない明日へと向かふ逆光のなか