水中眼鏡 山田航


水中眼鏡 山田航

海に血を混じらせながら泳ぎ切る果てにしづかな孤島を見たり

砕け散る水中眼鏡もがいてももがいても瓶詰めの微笑み

輝きを瞳よりも指で感じてる割れた水中眼鏡のかけら

自転車は波にさらはれ走り去るものみな君に届かぬ真夏

水没する向日葵 それを投げ捨てた女は今も船のどこかに

双眼鏡のぞいたままの格好で死ぬ日もきつと朝焼けは来る

粉と化す硝子ぼくらを傷つけるものが光を持つといふこと

硝子片ただよふ海で喉仏もたざるために死ねない君へ

世界ばかりが輝いてゐてこの傷が痛いかどうかすらわからない

水しぶき跳ね上げてもう戻れない明日へと向かふ逆光のなか

タグ:

      
                  

「作品 2011年6月3日号」の記事

  

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress