乾かしながら 田口綾子
雨ふれば終着点の都バスより降りたる順にひらきゆく傘
西門のきんもくせいに揺られゐる自然数てふうつくしきもの
前をゆく君を濡らせる雨の名を知らざるままにわれも濡れをり
(このやうに拒まれてゐる)サルバドール・ダリのまぶたにはあをゑのぐ
それは全て言葉のための骨であり君はからだに束ねて眠る
文字・ことば信じえざるに生活の輪ゴムは二本重ねて使ふ
切断の小指のごとき吸ひ殻を並べて君に明けてゆく空
石鹸を覆ふ薄紙破りつつ(ささやかに)きのふは消ゆるもの
ごみ捨て場にごみ捨てしのち捨てらるるごみにあらねば引き返しをり
カフェオレには砂糖を少し入れて飲む秋にポケットだらけのからだ