月光 天野匠
嫌いな奴をとことん嫌う君の癖 雲のうしろをゆく紅い雲
君なりに苦しみいるか踏み入らぬ領域ありて銀の雨ふる
あきかぜは人恋うちから孕むゆえ枯れ葉うごかす微力もつゆえ
たわいなき
こんなもんじゃないよと空を睨むときすでに言い訳めく月あかり
月光をもて濯ぎおり偏見に侵されやすき眼球ふたつ
雀らをかわいがりいし白秋のまなじり愛し月とあゆめば
胡麻かおるバンバンジーを噛みにけり食いしばることまれにある歯に
咲きのぼり巻きのぼりゆく朝顔の一念を見き夜更けて想う
鳴るひかるふるえる黙るさまざまの意志示しつつ電話ありたり
作者紹介
- 天野匠(あまの たくみ)
昭和四十八年埼玉県生まれ。平成十二年「白南風」に入会。鈴木諄三に師事。平成二十三年より編集委員となる。