白クマまくら
痛き夢むすばないやうふくふくの白クマまくらに頭をのせる
触れ得ざる極の冷気に撫でられて星野道夫の白熊ねむる
クヌートが銅像になるニュース白クマ記者も人に紛れて
潜つては旭山動物園の白くまが入場のひとを数へ上げてく
落日のポロトコタンに山の名を記され儀式の熊は飼はれる
漁業権もたぬアイヌは購ひし鮭をポロトコタンの秋風に干す
目覚めれば熊も草食つんつんと花わさび葉わさび水の匂ひす
柿みのる里に下り来て秋の熊曼珠沙華のなか斃されゐたり
大らかな耳のかたちの落花生楽天的な方に転がる
店頭に智恵を誇りゐるやうな「ソロモン法蓮草」袋入り種子
作者紹介
- 大沢優子(おおさわ ゆうこ)
1949年生まれ。中部短歌会同人。「白の会」会員。
現代歌人協会会員。
歌集『漂ふ椅子』(砂子屋書房刊)