白クマまくら          大沢優子

  • 投稿日:2012年11月02日
  • カテゴリー:短歌

白クマまくら

痛き夢むすばないやうふくふくの白クマまくらに頭をのせる

触れ得ざる極の冷気に撫でられて星野道夫の白熊ねむる

クヌートが銅像になるニュース白クマ記者も人に紛れて

潜つては旭山動物園の白くまが入場のひとを数へ上げてく

落日のポロトコタンに山の名を記され儀式の熊は飼はれる

漁業権もたぬアイヌは購ひし鮭をポロトコタンの秋風に干す

目覚めれば熊も草食つんつんと花わさび葉わさび水の匂ひす

柿みのる里に下り来て秋の熊曼珠沙華のなか斃されゐたり

大らかな耳のかたちの落花生楽天的な方に転がる

店頭に智恵を誇りゐるやうな「ソロモン法蓮草」袋入り種子

作者紹介

  • 大沢優子(おおさわ ゆうこ)

1949年生まれ。中部短歌会同人。「白の会」会員。
現代歌人協会会員。
歌集『漂ふ椅子』(砂子屋書房刊)

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