五月の庭     桜井健司

  • 投稿日:2013年05月31日
  • カテゴリー:短歌

短歌桜井130531

五月の庭       桜井 健司

景況の手触りぞよき日経を夜半の机上に折りたたみけり

漆黒の傘を頭上に掲げたる上司が雨の中を近づく

稜線を越えて五月は来たるらし風のぬるきに帽子飛ばされ

隣人は少年とその父母にして五月の庭に鯉を掲げつ

かさぶたをとりて薄き血染み出づる幼児の記憶 痛みかそけし

アベノミクス「べ」の濁音のしののめゆみだりがわしくふりそそぐまで

税理士に語尾強くわれは質されつ背なのうろくずざわめく気配

月餅の厚き艶にし齧りつくおみなの歯こそ愛しきものを

われの身とわれのめぐりの老いてゆく五月のありて暮るる鉄塔

死は常に除外例なし茂吉的措辞に一首を括るゆうぐれ

作者紹介

  • 桜井健司(さくらい けんじ)

1963年生まれ。『3$分の空』、『融風区域』、『朝北』。
「音」「Es」所属。

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