お天気の話ばかりするおとな達を憎んでた頃の文集ひらく 砺波 湊
「短歌人」2007年7月号に掲載された作品。はるか遠い日に僕も少年だったのだが、そうだ、そうだ、「おとな」ってそういうものだったよ、といたく共感した一首。作者は、そう遠くない日に少女だったひとだ。だから、当時の文集がまだ手許にあって、時にひらいてみたりするのだが、それでも、「憎んでた」はすでにほろ苦い過去形である。かつて僕が在籍していた職場で、労使関係その他をめぐってゴタゴタとしていた時、やってらんないね、とかブツクサ言い合っていた同僚に、「で、この件についてあなたの立場は?」と聞いてみたら、突然、ヤツは携帯の画面の天気予報の話に逃げ込んだのだった。しかり。お天気の話はおとなの避難所である。少年も少女も安易におとなになってはならぬ。