傷ふかくながく苦しむ原発は吾が産みし子のひとりなるべし
吉岡馨 「短歌人」四月十日開催東京歌会詠草
この歌は私が所属する短歌結社である「短歌人」の東京歌会に出
詠されたものだ。まだ、恐怖が進行中である原発の問題をいかなる
比喩で表現しうるのか。歌人のだれしもが直面する問題に、この作
者は一つの回答を出してみせた。原発を自らが産んだ子のひとりと
表現することは、そこに、原発のエネルギーの恩恵を受けてきた私
なる思いがある。読者もまたその同じ思いに取り込まれる。他人事
として傍観することはできない現実、作者も読者も「傷ふかくなが
く苦し」まなければならない。