海から散らばる 戸田響子
ぱらぱらとめくられてゆく
ページの隅に描かれている稲荷ずし
ぱらぱらとページが進み
油揚げがめくれあがって
酢飯が飛び出す
ページ
一面に
酢飯
が
散ら
ばってゆく
マイルドな酸味の米酢を使用
海藻がびっしりからんだ機械室宇宙に送り続ける信号
廃寺から次から次へと伸びてくる烏賊の足からの逃れられない
かみしばいが静かに始まる
星灯りのもと
真っ黒なかみだった
何枚も
かみを入れかえてゆく
わかめが
かみについている
わかめは砂の上に落ち
海のことを思い出していた