第7回詩歌トライアスロン三詩型融合受賞連載第3回
見知らぬ土地
草野 理恵子
(少年少女/手首)
見知らぬ土地は
地面が緩く
端のほうはどろどろしていた
見知らぬ土地で
見知らぬ少年少女たちが
高く手を上げていた
見知らぬ球体が天を舞い
見知らぬ巨大な手首が
吐き出されていた
見知らぬ少女が
手首に頭を突っ込み
白い脚がバタ足をしていた
ホタルブクロの花を思ったりした
辺りは暗く
遠く太陽が昇りそうな
気配がしていた
手首飛ぶ初夏になったら頭入れバタ足をする少年少女
(熊/頭部)
一人でいると
壁に大きな穴が開いた
穴は熊みたいな形になって
私におぶさってきた
穴はなんだかふわふわしていて
ぬいぐるみみたいだった
穴の頭部には
馬頭星雲が広がっていた
熊なのに馬なの?
と聞くと
え 熊なの?
とうろたえ始めた
穴をうろたえさせるつもりではなかったので
本格的におんぶした
雪になる前に帰りなよ
壁の穴熊さんみたいおぶさって頭部の形馬頭星雲
(蠅/顔)
辺りは光り輝き
白夜なのかなと思った
白い世界は
寒くもなく暑くもなかった
悲しいような楽しいような音楽がかかり
首のない人が通っても
怖くなかった
家は燃え殻のような木でできていたけど
脆くはなかった
体中に蠅がたかり
特に顔が蠅だらけの人が
夫になった
朝が来て
赤い鶏がきっと生きて行けるからと言った
蠅だらけ夫になった人の顔それでも生きて行けると鶏
(羊/足・手)
三本足で足を一本探している風の
羊が訪ねてきました
体に紙が貼られていて
足の説明かと思いきや
人間の迷子の張り紙でした
人間に頼まれたと言いました
羊は人間の手だけを見つけました
足の部分に手をつなぐように頼みます
私は何とかやってみました
羊は写真を撮るときのような
笑って困ったような顔になりました
迷子についてはわかりません
羊です足を一本探してる手を見つけたのでつないでください
(生物/腿)
空か海か地上か
わからない紺色の中で
あなたは私に絵を描いた
腿のあたりにこげ茶色の
花か目かわからない物を描いた
あてもなく歩きまわり
学校に着いた
行きなさい
私には息なさいと聞こえた
息をして
生物の授業を受けた
私の腿は分裂を繰り返し
成長している
息なさい
私は腿のこげ茶色に声をかける
茶色の目腿の辺りに描かれたの「生物」の時間分離始まる