花の雲   高橋龍


花の雲   高橋龍

時はいまなるやも皆既地球食

外方そつぽむくホーン岬の除虫菊

青桐にくわんくわん響く月の音

草紅葉バベルの塔を股のぞき

定位置に木は立ちてをり落葉せり

靉光の眼も抉られてハロウイン

木守柿百舌鳥のみかじめ料ならむ

葱の世に名は削られて捨てられる

天に二日無しずわい蟹のけぞり食ふ

枯蔦に自転車捕縛(からめと)られたり

木枯の果にありけりディズニーシー

signifiantいれものを溢れるsignifié なかみ虎落笛

初湯出でし母は墨痕淋漓たり

門松や数字なき世の目出度さを

美しく清く正しきひめはじめ

金屏風/昆布巻/孔雀/北枕

明朝の三角結冬ざるる

雪嶺に見合ふ肉又フォークの反り具合

ブログ「炉辺」ハンドルネーム雪女

坂下る去りゆく冬を追ひながら

貝寄風に乗るヴィナスは恥部隠す

引裂かれづつきら疼む春のみち

ヴィオレッタの血痰なもし落椿

花の雲スカイツリーを無視シカトして

すそ乱す母脛しろくさみだるれ

母・叔母・姉いつせいに間引きする畠

黒猫がローランサンに首つたけ

三月のY市の橋を渡りけり

セザンヌに林檎は描かれ尽くされぬ

大鴉/東へ/西へ/大ガラス

作者紹介

  • 高橋龍(たかはし・りゅう)

一九二九年 千葉生れ 一九四四年高梨花人に入門。
以後「花俳句」「れもん」「俳句評論」「面」「未定」「騎」同人。現「面」。

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