RAT ON ART
中山 奈々
飛行機の濃きアルコール花曇
ハグは緩めにめいめいにすみれ閉ぢ
鉛筆の指示が重なる暮の春
くちびるのうすき威嚇や竹落葉
夏衣ピッツァが出て来ない映画
きみはすぐ眠れる枇杷を剝く夜も
黒犬も老ゆるのか滴りに伏し
青嵐チェロを見つめるヴァイオリン
捨てらるる立場まで来て裸足かな
耳塞ぎけりより滝を聞くために
中山奈々(なかやま・なな)
一九八六年、大阪生。高校二年生のとき、俳句甲子園をきっかけに作句を開始。同時期に、結社「百鳥」入会(現在、同人)。同人誌は「里」「奎」を経て、「淡竹」所属。川上未映子責任編集『早稲田文学 女性号』(筑摩書房、二〇一七)、佐藤文香編著『天の川銀河発電所―Born after 1968 現代俳句ガイドブック』(左右社、二〇一七)に参加。