破地獄弾 竹岡一郎

  • 投稿日:2013年04月05日
  • カテゴリー:俳句

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破地獄弾         竹岡一郎

然し地獄なんか見やしない。花を見るだけだ。
        坂口安吾「教祖の文学」

 

みなぎつて地獄を開く貝柱

涅槃絵を囲みて地獄萌えはじむ

涅槃絵に顫へ地獄の育ちなる

はばたきの煙る地獄を蜷の道

累代の地獄沁みゐて雛澄むや

薇の渦は無間を沈思せる

弔砲や地獄に蝶の降りつぐ朝



(わか)</rubyく帰雁の影を掬びけり

深閑と地獄を浸す野蒜の香

鷽鳴けば地獄のひかり正史定め

牛頭馬頭の託したるこの白椿

茎立や廃市に斃れ偉人像

たまの緒を鬼あざなへる初音かな

地獄ではモダンガールが今すみれ

蚕かなたの釜の奈落へ食ひ進む

桑地獄遂はれて捨蚕拉がるる

鞦韆のたゆたふ地獄暮れなづむ

孕猫地獄の町の虹溜

虹巻くは地獄ひじりが青き踏む

わたしの中で犇めく氷や火や囀り

松露掻く身ぬちの奈落こぼさぬやう

若布殖え人類ぱつと散る平日

地獄花時みな天獄へ攀ぢしのち

まなこ涸れ割れて落花の無間かな

桜湯や道行となるめぐりあひ

壺焼の地獄分けあふ二人かな

火に透きて奈落遊びの花衣

さくら責む鶴の尾羽で幹くすぐり

あな淡し奈落呑み干し花と化し

亀鳴けるほかはしづもる地獄かな

天の獄雲雀けらくの阿鼻叫喚

地獄つらぬく弾は地獄の色や春

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